2015年11月13日金曜日

帯状疱疹後神経痛の予防


 予防についても少し述べておきます。米国での研究では水痘ワクチンを数万人の50歳以上の成人に接種することで、帯状疱疹の発症を対照群の半分に、痛みを残す人を3分の1に減らすことができたと主張する報告があります。2006年に、米国では60歳以上を対象とする帯状疱疹ワクチンとして承認されたこのワクチンはいわゆる「水ぼうそうのワクチン(水痘ワクチン)」のことであり、数十年前に日本でも研究開発されたワクチンです。

米国のみならずEUなど30カ国以上で「帯状疱疹の予防目的」で広く使われています。日本でも20034月に高齢者(50歳以上)に接種することが承認されましたが水痘と同じく任意接種なので自費となります。免疫力が落ちてくる60代以上の高齢者で、帯状疱疹をしたことがない人には帯状疱疹後神経痛を回避するためにもワクチンの使用が推奨されます。

免疫抑制剤を使用することになった患者さんで、帯状疱疹ワクチン接種を受けたもの・受けていないものを対照に前向きコホート研究を行った研究があります。それによると帯状疱疹の発生率は免疫抑制剤使用後において、ワクチン接種により約42%低下しました。帯状疱疹になる人はストレスや疲労により免疫力が下がっている状態なので、慢性的に不規則な生活を送る事や、過度の疲労、心労を要する作業を続ける事は控えた方が良いでしょう。規則正しい生活と、十分な栄養の摂取、心の安静が必要です。そうは言われても…という方が大半だと思いますが。

この病気に関しては、患部を冷やすのは逆効果であす。外傷ではなく神経の病気であるため、冷やすとかえってウイルスの働きを助長するのです。温湿布・カイロ等で温めるのも良い(乾燥肌の人は温めると痒みが現れるため、やめておいたほうが良い)でしょう。また温めることは、後のちの神経痛の予防にもなります。水ぶくれ(腫れ部分)が破れると細菌感染が起こりやすくなります。また、入浴に関しては自分で判断しないほうがいいでしょう。水ぶくれが破れた状態で入浴すると、患部に細菌が付着し、状態の悪化に繋がる恐れがあります。

帯状疱疹後の神経痛が出たら、まず神経ブロックを施行するのがいいでしょう。当院で何人もそのように治療して、痛みをとるという実績があります。薬物による徐痛には限りがあるようです。いつまでも飲み続け、塗布し続けなくてはならないようです。硬膜外ブロックだと標準的な場合だと7~8回ほど(運がよければ最初の2回ほど)で、痛みが余り気にならなくなり、痛み⇒痒みに変化し、その後数回でその痒みも忘れがちになります。そのあたりで2週間分程度の飲み薬で治療は終了するということになるのです。

 痛みや痒みなどの皮膚知覚は個人差が大きいので、痒い痒いといって創部を引っかいてそこから感染するということがたまに起こります。もしベースに糖尿病があると、その感染が重大なものになりかねませんので、痒いだけだなどと多寡を括らず、受診してください。

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