せっかくの血糖値測定装置なので、有効活用しようということになり、5日間つまり月曜日の朝から金曜日の昼食までの間、糖尿病食を食べてみました。糖尿病食は一般にカロリーを制限していますので、おなかが空きます。しかしせっかくですので、ある程度極端な条件を課したほうがわかりやすい、そう考えて一日1200KCalの、当院では一番厳しい糖尿病食を5日間食べて過ごすことにしたのです。朝、7時半になったら病院に出かけて朝食を食べる。昼、12時ごろ職員食堂でお昼ご飯を食べる、夜は5時半に職員食堂で夕ご飯を食べるという生活です。
毎日の血糖値の推移を全部お見せしてもいいのですが、あまり変わり映えしないものですし、単に食後高血糖がかなり有効に抑えられるということが分かっただけなので、二日分ほどここにUPすることにします。私が毎日必要とするカロリー(つまり食べていて体重が増加も減少もしない程度)は多分2000KCal程度だと思います。それに対して1200KCalの摂取カロリーですから毎日800KCalほど不足することになります。その不足分を私の皮下や腹腔内の脂肪で賄うとすれば、毎日100gにやや不足するほどの脂肪を使うことになります。
つまり5日間で500gほど体重が減少する計算になります。面白いデータが取れて、しかも一週間で0.5㎏のダイエットができる。そのような皮算用に思わず頬がだらしなく緩んできたのも束の間、月曜日の昼食時にはすでに空腹でとてもつらい気持ちになりました。それ以後も少なめの食事に体が慣れるということはなく、食べた後にちっとも満腹感がないし、やがて空腹感が責め苛む。そんな状態が5日間続いたのです。何しろ食事の内容がかなり貧相で、糖尿病食だから仕方ないとはいえ、なんでこんな《実験》を思いついたのだろうなどと、実験開始当日から後悔するという始末でした。
結論から申し上げます。健康で食事前に空腹を覚える人に1200KCal/dayの糖尿病食は無理。決してお勧めできません。なお、せっかく過酷なダイエットを実行したのですから、体内の脂肪がどの程度燃焼しているかを調べるために、血中のケトン体を測定してみました。その結果はあまり芳しいものではなく(健康という意味では芳しいのかもしれません)、ケトン体は正常範囲内で、あまり体脂肪が好調に燃焼しているとは言えないようでした。今回の教訓ですが、無理なダイエットは長続きしないということにつきます。何しろ、週の後半は頭の中に食べ物のことしか浮かびませんでした。
なお、18日朝食時のヨーグルトとオリーブ油は病院で用意してもらった食事に含まれるものではなく、あまりの空腹に耐えられなくなって自分で勝手に追加したものです。また19日の朝食と夕食のアーモンド8粒も自分で用意したものです。したがって一日1300KCal程度のカロリー摂取になっていたはずです。糖尿病になりかけている人は、当院で糖尿病教室を開いています。そこでは私がやったような極端な食事指導はしませんので、気軽にお問い合わせください。
2017年11月29日水曜日
2017年11月1日水曜日
口腔内の健康
医療系のサイトで興味深い記事を見つけました。それは食べることと、心身を健康に保つことの関係について述べたものです。とても大切なことなので、これからご紹介します。以下がその内容です。なじみのないカタカナはできる限り普通の日本語に直しておきました。
「口腔機能の低下を示す飲食機能虚弱は近年提唱された概念であり、高齢者の虚弱や筋肉量減少、要介護など高齢者医療において問題となるさまざまな危険因子との関連性が注目されている。東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム専門副部長の渡邊裕氏は、高齢者を対象に口腔機能と社会機能との関連性を分析し、飲食機能虚弱予防を突破口として高齢者医療のさらなる改善を図る手法を第59回日本老年医学会で検討した。
渡邊氏は、高齢者の虚弱が進行していく段階を①社会性/心の虚弱期②栄養面の虚弱期③身体面の虚弱期④重度虚弱期-に分け、各段階における具体的な状況について説明した。
①では活動量の低下や物事に対する意欲の低下から口腔への関心が薄れ歯を喪失し、②では咬合力の低下に起因するかめない食品の増加などに伴い食欲や食事の多様性が低下する。③では食事量が減少することで筋肉量減少や運動器症候群などが発生し、④では摂食嚥下障害や咀嚼機能不全から要介護状態、運動・栄養障害に陥るという。
また、虚弱状態が悪循環していく悪循環においても、咬合力や咀嚼機能の低下といった、飲食機能虚弱を構成する各要素が幅広く関与するとした。
そこで渡邊氏は、口腔機能の維持や改善を図ることで、虚弱や筋肉量減少、要介護、死亡危険度の低減が見込めるかどうかを検証した。
検証では、東京都に在住する70歳以上の男女約1,200人を対象に、口腔への関心度や歯科受診の有無、外出頻度を従属変数として多重ロジスティック回帰(適切な日本語訳がありません)分析を行い、社会機能・生活機能との関連を分析した。
その結果、自分の歯の本数を把握していない、もしくは把握していても実際の歯の本数と6本以上差がある場合は口腔への関心度が低下している群(低下群)、5本以内の差であれば口腔への関心度を維持している群(維持群)とすると、低下群は外出頻度の減少と有意に関連していた(図)。
一方、「昨年より外出頻度が減少したか」との問いに「はい」と答えた群は、咀嚼困難感、口腔乾燥感、1年以内の歯科受診がないことと有意に関連していた。
また、歯科の非受診群は機能歯数の減少や咀嚼機能、食欲調査票(CNAQ)スコアの低下と有意な関連性が見られた。さらに、「友人の家を訪ねる」「家族や友人の相談に乗る」といった社会活動に消極的である人ほど口腔機能虚弱に該当しやすくなるとの報告もあるという。
こうした検証結果から、同氏は『航空機能虚弱予防には、地域の介護サービスや歯科医院などが連携して航空への関心を高め、社会機能、航空機能の改善を図ると良いと思われる。今後はそうした手法を確立し、地域へ普及させる必要がある』と述べた。」
口腔内を含めて身体を清潔に保つこと、外の世界に興味を絶やさぬこと、生きることに貪欲であること、こうしたことが「ピンピンコロリ」にとっても必要なようです。もちろん「ピンピン」だけで「コロリ」抜きのほうがいいとおっしゃる方もいるかと思いますが、どうでしょうか。この世の中に知り合いが一人もいなくなって自分ひとり元気で「ピンピン」していることが果たして幸せかどうか。人間はなぜヒトとしてこの世に意識を持っているのか、そういったことも秋の夜長に考えてみようではありませんか。
「口腔機能の低下を示す飲食機能虚弱は近年提唱された概念であり、高齢者の虚弱や筋肉量減少、要介護など高齢者医療において問題となるさまざまな危険因子との関連性が注目されている。東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム専門副部長の渡邊裕氏は、高齢者を対象に口腔機能と社会機能との関連性を分析し、飲食機能虚弱予防を突破口として高齢者医療のさらなる改善を図る手法を第59回日本老年医学会で検討した。
渡邊氏は、高齢者の虚弱が進行していく段階を①社会性/心の虚弱期②栄養面の虚弱期③身体面の虚弱期④重度虚弱期-に分け、各段階における具体的な状況について説明した。
①では活動量の低下や物事に対する意欲の低下から口腔への関心が薄れ歯を喪失し、②では咬合力の低下に起因するかめない食品の増加などに伴い食欲や食事の多様性が低下する。③では食事量が減少することで筋肉量減少や運動器症候群などが発生し、④では摂食嚥下障害や咀嚼機能不全から要介護状態、運動・栄養障害に陥るという。
また、虚弱状態が悪循環していく悪循環においても、咬合力や咀嚼機能の低下といった、飲食機能虚弱を構成する各要素が幅広く関与するとした。
そこで渡邊氏は、口腔機能の維持や改善を図ることで、虚弱や筋肉量減少、要介護、死亡危険度の低減が見込めるかどうかを検証した。
検証では、東京都に在住する70歳以上の男女約1,200人を対象に、口腔への関心度や歯科受診の有無、外出頻度を従属変数として多重ロジスティック回帰(適切な日本語訳がありません)分析を行い、社会機能・生活機能との関連を分析した。
その結果、自分の歯の本数を把握していない、もしくは把握していても実際の歯の本数と6本以上差がある場合は口腔への関心度が低下している群(低下群)、5本以内の差であれば口腔への関心度を維持している群(維持群)とすると、低下群は外出頻度の減少と有意に関連していた(図)。
一方、「昨年より外出頻度が減少したか」との問いに「はい」と答えた群は、咀嚼困難感、口腔乾燥感、1年以内の歯科受診がないことと有意に関連していた。
また、歯科の非受診群は機能歯数の減少や咀嚼機能、食欲調査票(CNAQ)スコアの低下と有意な関連性が見られた。さらに、「友人の家を訪ねる」「家族や友人の相談に乗る」といった社会活動に消極的である人ほど口腔機能虚弱に該当しやすくなるとの報告もあるという。
こうした検証結果から、同氏は『航空機能虚弱予防には、地域の介護サービスや歯科医院などが連携して航空への関心を高め、社会機能、航空機能の改善を図ると良いと思われる。今後はそうした手法を確立し、地域へ普及させる必要がある』と述べた。」
口腔内を含めて身体を清潔に保つこと、外の世界に興味を絶やさぬこと、生きることに貪欲であること、こうしたことが「ピンピンコロリ」にとっても必要なようです。もちろん「ピンピン」だけで「コロリ」抜きのほうがいいとおっしゃる方もいるかと思いますが、どうでしょうか。この世の中に知り合いが一人もいなくなって自分ひとり元気で「ピンピン」していることが果たして幸せかどうか。人間はなぜヒトとしてこの世に意識を持っているのか、そういったことも秋の夜長に考えてみようではありませんか。
2017年10月18日水曜日
血糖値の連続測定についての注意
アボット社から血糖値の連続測定装置が、価格破壊的な代価で販売されたことは、最近のブログで何度かご紹介しました。残念なことですが、国の保険行政上の決まりで、この装置を保険で使うにはいろいろ縛りがあります。まず糖尿病専門医が二人勤務する病院で、インスリンの連続注入器を用いて管理されている患者がいること、などが条件になります。これは膨れ上がる医療費を抑制するために理解できないこともないのですが、将来糖尿病になって、国が支払わなければならなくなる費用と比べると微々たるもののようにも思えます。貧すれば鈍するとはよく言ったものです。
しかし、この機械を無制限に使えるようにしてしまうと、保険財政を圧迫するのも事実で、難しいものです。センサーは14日分の連続測定が可能で、一つ7000円程度、読み取り装置が8000円ほどで入手可能なので、自費で測定するということも可能です。そして糖尿病に対して一定の関心を持っている人たちが相当数存在し、自分もこれで測定したいと考えている人もいると思います。医療を職業とする人たちの中には、これを収入増加の手段とみる向きがあったとしても不思議ではありません。
実際の仕入れ値はセンサーが税抜きで6400円前後だったと思いますので、税込みでも7000円程度になります。読み取り装置のほうは税抜きで7500円程度のもので、使いまわしが可能ですので、病院に一台あれば十分です。当院では血糖値連続測定を自費で賄いたいという方に血糖値連続測定のセンサーをお世話するという便宜を図っています。実際には測定開始前に、こまごまとした注意を与え手から、実施する、そして2週間後にその測定結果と注意点をお知らせすることになると思うのですが、結果をその場でお渡しするにしても、結果の解析には時間がかかります。
そして解析するためには、2週間の行動すべてを細かく記載していただかなくてはなりません。いつ何をどれだけ食べたかだけでなく、いつ一休みしたとか、いつ運動したとか、ブドウ糖を消費する活動性についても記載しておいて、その結果を担当者に渡していただけないと、その後の生活指導に有用なアドバイスはできないのです。多くの人(多分ほとんどすべての人)がある程度の年齢になると耐糖能低下をきたしているようです。すると、少し前にNHKで放映していた「血糖値スパイク」が観察されると思います。
健康でいるためには、いろいろ努力が必要です。しかしその努力をすることで、健やかに年を取っていける(少なくともその確率がかなり上昇する)ので、皆さん、健康になるために努力してください。
しかし、この機械を無制限に使えるようにしてしまうと、保険財政を圧迫するのも事実で、難しいものです。センサーは14日分の連続測定が可能で、一つ7000円程度、読み取り装置が8000円ほどで入手可能なので、自費で測定するということも可能です。そして糖尿病に対して一定の関心を持っている人たちが相当数存在し、自分もこれで測定したいと考えている人もいると思います。医療を職業とする人たちの中には、これを収入増加の手段とみる向きがあったとしても不思議ではありません。
実際の仕入れ値はセンサーが税抜きで6400円前後だったと思いますので、税込みでも7000円程度になります。読み取り装置のほうは税抜きで7500円程度のもので、使いまわしが可能ですので、病院に一台あれば十分です。当院では血糖値連続測定を自費で賄いたいという方に血糖値連続測定のセンサーをお世話するという便宜を図っています。実際には測定開始前に、こまごまとした注意を与え手から、実施する、そして2週間後にその測定結果と注意点をお知らせすることになると思うのですが、結果をその場でお渡しするにしても、結果の解析には時間がかかります。
そして解析するためには、2週間の行動すべてを細かく記載していただかなくてはなりません。いつ何をどれだけ食べたかだけでなく、いつ一休みしたとか、いつ運動したとか、ブドウ糖を消費する活動性についても記載しておいて、その結果を担当者に渡していただけないと、その後の生活指導に有用なアドバイスはできないのです。多くの人(多分ほとんどすべての人)がある程度の年齢になると耐糖能低下をきたしているようです。すると、少し前にNHKで放映していた「血糖値スパイク」が観察されると思います。
健康でいるためには、いろいろ努力が必要です。しかしその努力をすることで、健やかに年を取っていける(少なくともその確率がかなり上昇する)ので、皆さん、健康になるために努力してください。
2017年9月20日水曜日
7月17日と18日の血糖値推移
今回は近所のマザーリーフという軽食屋さんで朝食をとることにしました。ハニートーストとミニサラダですが、それだけだとどうしても野菜不足になるので、野菜ジュースを飲んでからそのお店に向かいました。野菜ジュースのカロリーが60KCalほどで、9時15分ごろそのジュースを飲み、一息ついて10時前に車に乗り込み、5分ほどでマザーリーフに到着。注文したハニートーストがテーブルにやってくるまで5分ほどを要しました。10時5分ごろからトーストを食べ始めたことになります。
10時前に血糖値が上昇しているのは野菜ジュースのためでしょう。10時に少し曲線が下向きになっています。インスリンが分泌されて血糖値が下がり始めたようです。トーストによって再び血糖値が上昇、150ほどになっています。それから低下し始め、あまり間隔を開けずに食べた昼ご飯でやや上昇を見せますが、この時に摂った糖質量はわずかなものでご飯1/4膳ですので、血糖値の上がり幅もわずかなものでした。夕ご飯もわずかな糖質ですが、昼よりも上がり幅が大きい。この理由はわかりません。
ひとつの可能性として、この日は自宅から任地まで19時前にドライブしたので、その間ほとんど体を動かすことがなく、つまりブドウ糖の消費量が極端に少ない状態になって、細胞に吸収されることのないブドウ糖が血管内に増加したと考えられないこともない、という言い訳じみた解釈が可能ですが、本当かどうかわかりません。いずれにしても私の耐糖能、膵臓からのインスリン分泌機能からすると、ご飯1/4膳程度が処理能力いっぱいと言ったところのようです。これを超えると血糖値が目標とする上限である140を超えてしまいます。
その次、18日の血糖値はどうだったでしょうか。ご飯が1/4膳から1/3膳に増えていますが、アーモンドには糖質があまり含まれていないし、粒より野菜190mlのカロリーは70KCalほどで、でんぷん質として18g程度です。にもかかわらず血糖値は180に達しています。この血糖値の動きも解釈が難しいというか、言い逃れが難しいですね。なぜこのような動きを示すのか、解りません。お昼ご飯は朝食とほぼ同じメニューに豚もも肉のグリルが加わっており、分量的に多いのに、血糖値の上昇は目標範囲(80-140)に収まっています。この二つを比べてみると、とても説明に難儀します。
この日の夕食は新たに同僚となった人たちの歓迎会で、様々な小皿が次から次に供され、満腹を軽く凌駕してしまいました。この時の血糖値は175前後をマークしていますが、それでも朝食後の血糖値よりも若干低いのです。このあたりの動きを見ると、訳が分からんからなるようになるさ、と居直ってしまいたいところです。私の個人的な事情ではそれでよくても、私が治療するその対象となる人にとっては、ケセラセラと言う訳にはいきません。何が原因で高血糖になるのか、どういった食生活上の注意をすればそれを回避できるのか、その辺を知ることは今の私よりもかなり差し迫った問題だからです。
ここで初心に立ち返り、血糖値に影響を与える諸因子を考えてみることにしました。まず食事でとりこんだ糖質。これがなければ血糖値は上がり様がありません。血糖値を上げるものとしては、体の中で分泌される様々な物質(グルカゴン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミン、抗利尿ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)があり、下げるものとしてはインスリンとその関連の者たちだけです。交感神経が血糖値を上げる方向に作用するはずで、そうすれば副交感神経は下げる方向で作用すると考えられます。
食後の血糖値の推移は食後インスリンが分泌されるという事だけでなく、食後のリラックスの程度によっても修飾されるもので、食後すぐにまなじりを決して何らかの緊張を強いられる場に向かわなければならなくなったらそれは血糖値を押し上げる方向に作用するでしょう。一方、激しい運動を要求される場合にはその運動でブドウ糖を消費するので、血糖値が上がりすぎることはないと思われます。どういったときにどのような動きをするか、それを知りたいと思ったら同じような条件を何度も作り、その時の緊張の度合いとか、ストレスのかかり具合を平均化する必要があります。
ある程度構想がまとまったら、例えば糖尿病食を数日間続けて、その間の血糖値の推移を見たり、朝食を抜いた状態で数日間過ごすなどのことが必要になります。5日間、1200Kcal/日で過ごす覚悟がついたら、もう連続血糖値測定センサーを取り付けてみたいと思っています。全身に水をかぶって神様に願掛けするといった大げさな気持ちはありませんが、5日間の間1200KCal/日で過ごすのは覚悟が必要です。そのうち、何とか年内にやってみたいと思っています。乞う!ご期待。

ひとつの可能性として、この日は自宅から任地まで19時前にドライブしたので、その間ほとんど体を動かすことがなく、つまりブドウ糖の消費量が極端に少ない状態になって、細胞に吸収されることのないブドウ糖が血管内に増加したと考えられないこともない、という言い訳じみた解釈が可能ですが、本当かどうかわかりません。いずれにしても私の耐糖能、膵臓からのインスリン分泌機能からすると、ご飯1/4膳程度が処理能力いっぱいと言ったところのようです。これを超えると血糖値が目標とする上限である140を超えてしまいます。
その次、18日の血糖値はどうだったでしょうか。ご飯が1/4膳から1/3膳に増えていますが、アーモンドには糖質があまり含まれていないし、粒より野菜190mlのカロリーは70KCalほどで、でんぷん質として18g程度です。にもかかわらず血糖値は180に達しています。この血糖値の動きも解釈が難しいというか、言い逃れが難しいですね。なぜこのような動きを示すのか、解りません。お昼ご飯は朝食とほぼ同じメニューに豚もも肉のグリルが加わっており、分量的に多いのに、血糖値の上昇は目標範囲(80-140)に収まっています。この二つを比べてみると、とても説明に難儀します。
この日の夕食は新たに同僚となった人たちの歓迎会で、様々な小皿が次から次に供され、満腹を軽く凌駕してしまいました。この時の血糖値は175前後をマークしていますが、それでも朝食後の血糖値よりも若干低いのです。このあたりの動きを見ると、訳が分からんからなるようになるさ、と居直ってしまいたいところです。私の個人的な事情ではそれでよくても、私が治療するその対象となる人にとっては、ケセラセラと言う訳にはいきません。何が原因で高血糖になるのか、どういった食生活上の注意をすればそれを回避できるのか、その辺を知ることは今の私よりもかなり差し迫った問題だからです。
ここで初心に立ち返り、血糖値に影響を与える諸因子を考えてみることにしました。まず食事でとりこんだ糖質。これがなければ血糖値は上がり様がありません。血糖値を上げるものとしては、体の中で分泌される様々な物質(グルカゴン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミン、抗利尿ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)があり、下げるものとしてはインスリンとその関連の者たちだけです。交感神経が血糖値を上げる方向に作用するはずで、そうすれば副交感神経は下げる方向で作用すると考えられます。
食後の血糖値の推移は食後インスリンが分泌されるという事だけでなく、食後のリラックスの程度によっても修飾されるもので、食後すぐにまなじりを決して何らかの緊張を強いられる場に向かわなければならなくなったらそれは血糖値を押し上げる方向に作用するでしょう。一方、激しい運動を要求される場合にはその運動でブドウ糖を消費するので、血糖値が上がりすぎることはないと思われます。どういったときにどのような動きをするか、それを知りたいと思ったら同じような条件を何度も作り、その時の緊張の度合いとか、ストレスのかかり具合を平均化する必要があります。
ある程度構想がまとまったら、例えば糖尿病食を数日間続けて、その間の血糖値の推移を見たり、朝食を抜いた状態で数日間過ごすなどのことが必要になります。5日間、1200Kcal/日で過ごす覚悟がついたら、もう連続血糖値測定センサーを取り付けてみたいと思っています。全身に水をかぶって神様に願掛けするといった大げさな気持ちはありませんが、5日間の間1200KCal/日で過ごすのは覚悟が必要です。そのうち、何とか年内にやってみたいと思っています。乞う!ご期待。
2017年9月6日水曜日
糖質中心の大食に伴う血糖値の変動
せっかく連続血糖値測定装置をくっつけたので、ただ通常の食事をしてその時の血糖値の変化を記録しても面白くないと思いました。そこで、まず最初にやってみたのが大喰。何でもキリスト教文化圏では7つの大罪の一つに上げられており、大喰というのは単にがっついている様子がみっともないと言うレベルのことではなく、色欲、強欲、憂鬱、憤怒、怠惰、虚飾、傲慢と同列に置かれるものです。尤も、私など大罪と聞けば殺人とか、放火などを思い浮かべるので、キリスト者と私では罪の概念が違うのかもしれないですね。
過食の実験をしたのは7月16日の昼食。この日の朝食は9時頃。野菜サラダ150g、ウィンナソーセージ2本、パン2切れで、朝食としては普段どおり。前日の夜にパスタ屋さんでやや遅い時刻(午後9時~10時)にサラダ、パン(何個食べてもOK)、パスタ、アイスクリームを食べました。妻と娘が一緒だったので、彼らの食べ残しも私が平らげたのがよくなかったようです。私が食べたパスタの量は多分1.5人前よりもやや多く、そのために就寝時刻になっても血糖値が低下傾向を見せず、午前2時から4時にかけて140を超えています。
当日の朝のやや控えめな食事の後に血糖値が180を超えているのは前夜の不摂生が原因です。つまり、前の日の食事内容が翌日の食後血糖値に影響すると言うことでこれは危険です。なぜなら、常識的な食事で血糖値が跳ね上がると、今度はリバウンドで低血糖状態に追い込まれるからです。追い込まれるなどと言うと、まるで自分のせいではないようなので、こんな表現はだめですね。低血糖状態になると、イラつくし、冷や汗が出ることもあるし、食事をむさぼるように食べたくなるのです。
この日の昼、そんな条件の中でホテルオークラの中に入っている中華屋さんでまたまた妻と娘の分も食べてしまいました。今度はパスタよりもストレートに血糖値に反映される内容の食べ物で、そのために血糖値が220になってしまいました。糖質はどうも中毒になるようで、いったんどこかで堰が切れるとどんどん沢山食べるようになる、そんなメカニズムが体の中に埋め込まれているのかもしれません。つまり過食⇒血糖値急上昇⇒インスリンの大量分泌⇒血糖値の急激な低下⇒低血糖発作⇒過食という悪循環です。
この日は夕食を余りお腹がすいていない状態で8時過ぎに食べ始めましたが、昼食後の血糖値が低下するさなかにわずかの糖質を食べても血糖値に影響がありませんでした。今回の実験を通して分かったことがいくつかあります。まず、食べ過ぎた後、空腹になった状態で通常量の食事をとると、その食事で一過性の高血糖のスパイクが見られること。そしてその後にインスリンの過量分泌によって引き起こされる低血糖が襲い掛かると言うことです。
もう一つ、糖質中心の過食の程度如何ではインスリンの分泌が間に合わず、高血糖状態が長時間持続すると言うことです。血液中のブドウ糖の内の0.01%ほどが環状構造から直鎖構造に移行して存在します。その直鎖の一方はアルデヒド基です。炭素が5つついた直鎖にアルデヒド基がついたのがブドウ糖、炭素一つの構造にアルデヒド基がついたのはアセトアルデヒドと言ってお酒が代謝されて最初に出来るものです。炭素なしでアルデヒド基に水素が一つだけくっついた奴は猛毒のホルマリン。
ホルマリンの毒性が弱くなったものがアセトアルデヒドで、お酒はホルマリン程ではないけど、毒性があります。そしてブドウ糖もホルマリン程ではないけど毒性があります。分子量がアセトアルデヒドと比べるとブドウ糖のほうがずっと大きいので、その毒物の作用する場所が異なってきます。ブドウ糖が細い血管に作用するのに対してアセトアルデヒドは血管からしみ出て脳の中に直接影響します。だから、毎日お酒を飲んでいると大脳皮質が萎縮します。そうするとちょっと頭をぶつけただけで慢性硬膜下血腫になる危険が増します。
一方、お酒が入ると肝臓がブドウ糖を合成しなくなるので、飲酒後には血糖値が下がります。その下がり具合は人によりけりで、少しのお酒でよく下がる人がいる一方、沢山飲んでもあまり下がらない人もいます。前者に該当するひとは多分週5日ほどの控えめな飲酒で糖尿病のリスクを押さえ込む効果があると想像されます。そして控えめな(毎日日本酒にして0.5合程度)飲酒でお酒の毒性が体を攻撃するほどでもない、そういった呑み方をする人が長寿になるのだと思われます。
お酒を取るが、長寿をとるかと言うことではありません。程々にすることでお酒を楽しみながら健康に長生きできるので、ぐでんぐでんに酔っ払うまでお酒を飲むと言う習慣からそろそろ抜け出した方がいいのではないでしょうか。ほっぺたがほんのり温かくなる程度でやめておく、ちょっと物足りないかもしれませんが、慣れればこれが一番だと思うようになるでしょう。
2017年8月31日木曜日
血糖値の連続測定で分かること
少し前に血糖値の測定について述べました(『趣味の血糖値測定』参照)。その項で述べたのは食後一定時間の後に指先や耳たぶなどを針でつついて出血させ、その血液から血糖値を測定する装置を用いたものでした。その測定で知りたかったのは、私の耐糖能がどの程度か、どのような食生活をすれば膵臓のインスリン分泌組織に過度な負担を強いずに美味しく食を楽しむことが出来るかというものでした。
しかし食後殿程度の時間が経てば血糖値が最大になるのか、それは何度も計ってみなければ分からないことです。もちろん食後一定時間の血に計るだけでも随分おもしろいのですが、血糖値の高い状態がどの程度続くのかとか、そのピークが食べ物の種類によってどう違ってくるのかと言ったことは分かりません。なんとなく決め手にかけるという気持ちが拭い去れませんでした。そんなもやもやした気持ちでいるときに、血糖値を15分おきに2週間の間測定し続ける装置がとても安価に利用できるようになったことを知りました。
従来連続血糖値測定装置は体にくっつけるセンサー部分が20万円ほど、そしてその読取装置が40万円ほどするもので、飲み代を節約する程度で何とかなるものではありませんでした。しかし2~3年前だったと思いますが、いきなり読取装置が7500円ほど、ディスポのセンサーが7000円ほどで入手可能となり、大幅な価格破壊が起きたのです。これだったら、自分の体を使った実験が、月にいちど飲みにいくのを控えれば、できそうです。
私は好奇心が強いほうで、簡単にその好奇心の前に敗れ去り、いつの間にか連続測定装置を買い込んでいました。そして早速自分の体に装着して食事記録をつけ始めました。今回はその興味深い結果の中から、『医者でもこんな無茶な食生活をしているのか』と言う形で悪影響が広まらないものを選んでここにご紹介します。
2時過ぎに血糖値が低下して80あたりを推移しています。そして6時ごろには上昇傾向が認められ、6時15分頃布団から『脱出』しました。6時過ぎに小さなピークを形成した後血糖値が下がっているのは多分起床に引き続く身体活動でブドウ糖を消費したためと思われます。その日の朝食は野菜ジュースにオリーブ油をたらした奴を飲んで、前日のビーフシチューの残りを食べました。ジャガイモなどの付けあわせが入っていたので、ご飯やパンなどは食べていません。デンプン質の摂取量が少ないので、ほとんど血糖値は上っていません。食べ始めて比較的早めに血糖値が上昇しているのは、野菜ジュースに含まれる糖質のためだと考えられます。
昼食は野菜ジュースの後に、豚の肋軟骨に肉がくっついている奴をトマトソースで長時間に込んで軟骨がとろとろになったものをメインに食べました。その時の血糖値の変化はご飯を1/3膳ほど食べたにもかかわらず、あまり目立った上昇は見られません。また食後すぐに血糖値のピークを迎えています。昼食の直後に小外科手術が3件飛び込んできましたので、それらの処置で身体活動性が上った事がその理由かもしれません。処置を終え、自室で1時間ほど寛ぎました。休憩が血糖値に影響を及ぼしていないこと、飴玉1個(8g)が血糖値に影響しないことがわかります。
夕食は実験を兼ねて、少し多めに食べてみました。サラダを食べた後に、うなぎの蒲焼を一切れ、手羽先を甘辛く煮たもの3、枝豆(これはビールと一緒に)、そして極めつけは羊羹です。羊羹30gとしていますが、これは重量を測定したわけではなく、適当に書いたものなので、あまり当てになりません。しかしご飯の量などから判断すると、これほど血糖値が上昇するのは変です。どうやら蒲焼とか甘辛煮似含まれている糖分の影響を強く受けているようです。
9:15には夕食を終えているのですが、血糖値の高値安定は深夜まで続いています。食事の後に血液中に溢れてきたブドウ糖をすい臓から出るインスリンで処理しきれなくなったのか、この程度の血糖値であればすい臓からそれほど大量のインスリンが分泌されないので長いこと140を超える血糖値が持続したのか、それは分かりません。しかしここでいえるのは糖質を多めに食べると長いこと高血糖が持続すると言うことです。しかし、ここであわてて結論を出すこともないので、血糖値の推移に関する観察をしばらく続けてみたいと思っています。
2017年8月29日火曜日
熱中症
私が子供だった頃は熱中症などという概念はありませんでした。日射病と言って、日に当たりすぎて体温が過度に上昇した状態をさすものでした。そのような人を見かけたら、とりあえず木陰に運んで冷やしたタオルを頭の上に乗っけて体が普通の体温に戻るのを待つ、それが唯一の治療でそれほど深刻なものとは思われていませんでした。こむら返りや、筋攣縮など誰も長時間の強い日射と関連付けていませんでしたので、当時は日射病にこむら返りが見られると言ったことは言われていません。
熱中症に限らず、疾病の概念は何らかの原因に痰を発していかなる病状が関連付けて把握されているかという形で規定されますので、誰も痙攣などを念頭に置かなければ、日射病の人が痙攣を起こしていてもそれは日射病によるものではなく、たまたま痙攣を起こしているのだと考えてしまうわけです。今日、熱中症は体温の上昇を防ぎ難いような環境にいると、まず発汗して体温を下げようとする、発汗によって体内の水分と塩分などが奪われる、体内の水分バランスが崩れることで、様々な反応が引き起こされる。
今日熱中症はその一連の反応を中心に理解されていますので、木陰で休ませて云々と言う牧歌的な対応はしなくなりました。病院に勤務していると、5月頃から熱中症の患者の搬送が増えてきます。かんかん照りの日よりも、若干気温が低くても湿度が高い日のほうが熱中症は発生しやすいのです。それは湿度が高いために大量に汗をかかないと体温が有効に下がってくれないからです。他にもいろんな因子が関係してきますが、一番重要なのは体温調節のための発汗です。
汗には水だけでなくミネラルも含まれています。子供の頃、部活が終わって後片付けなどをしているときに、汗が乾いて皮膚の表面がざらざらしているのを経験したことはお有りでしょう。つまり汗をかくと体から塩分も出て行くのです。塩の取りすぎで高血圧になるのだから、汗から塩が体外に出て行くのであれば、多少塩味の強い食べ物を食べても、汗をかけば大丈夫。そういった変な自信を持って塩辛いものを食べていませんか?一見理に適っているような意見ですが、駄目ですよ。
塩辛さを好む味覚はある程度習慣によって形成されるものです。しかし汗をかくような運動は、例えば溶鉱炉で働く人のように特殊な環境で必ず大量に発汗する仕事についているのでない限り、塩分嗜好の習慣のように確実に塩分を体外に排出すると言うことはありません。だから塩分は体に溜り気味になって高血圧へと向かっていくのです。それに、塩には発がん性もあります。ほどほどにしておかないと、辛い思いをすることになりますよ。
その熱中症ですが、病院に搬送されたり、自分で受診する人たちの中には、熱中症で顔なじみになった人もいます。毎年、いちシーズンに複数回病院にお金を落としていく患者さんもいます。熱中症はとても危険な病態ですので、あまり軽く見て、『熱中症になったら病院に言って点滴してもらえば良い』などと考えない方が良いと思うのです。何度か繰り返しているうちに、筋肉が壊死してしまってクラッシュシンドロームのような状態になる事だってあるかもしれない。そうすると、死んでしまってもおかしくないのです。
少しの注意である程度は回避できます。複数人の同僚を差し置いていつも自分が率先して点滴を受けに来る、そういって嗤っているうちはいいのですが、ちょっとタイミングがずれると、赤血球がどろどろになってあちこちに詰まるようになり、筋肉が壊死して、それらから破棄された『ごみ』が血流に乗って腎臓のフィルタに詰まってしまいます。そうすると腎不全になり、生活全体がかなり味気ないものになりかねません。最悪の場合には熱中症で死亡すると言う事態を招きかねません。
水分とミネラルの補給を適切に。適度な休憩を入れて体温の過度の上昇を予防しましょう。湿度の高い戸外での作業を強いられるときには、例えば一時間に一度冷房の聞いた部屋で休憩を取り、そのときに水分を充分に補給すると言った対応が必要になります。湿度と温度を相手にロシアン・ルーレットのようなことを続けると、何時か実弾が自分めがけて飛び出してくると言う事態も起こらないとは限らないので、くれぐれも自分の体を同僚の盾に使ったりしないように、充分お気をつけて今しばらく続く夏場を乗り切ってください。
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