マダニというたちの悪い病原性医動物が草原、森林などに生息しています。ウィキペディアというネット上の百科事典には次のような記載があります。『マダニはハーラー器官と呼ばれる感覚器を持ち、これらによって哺乳類から発せられる二酸化炭素の匂いや体温、体臭、物理的振動などに反応して、草の上などから生物の上に飛び降り吸血行為を行う。その吸血行為によって、体は大きく膨れあがる』
このマダニに咬まれた症例を私はこれまでに3回診ました。ひとつは噛み付いて吸血し、体が赤黒く膨れ上がった状態のもので、細いピンセットを頭の近くに差込み、皮膚から慎重に吸血器官を引っこ抜いて事なきを得ました。残りの二つはマダニに咬まれた傷跡が化膿して直径5cmほどの化膿した組織の塊を見たのですが、話を詳細に聞くとどうやらマダニ咬症だったようです。
このマダニという奴は日本紅斑熱、Q熱、ライム病、回帰熱、ダニ媒介性脳炎、重症熱性血小板減少症候群などたちの悪い疾患を引き起こす可能性があります。もし体の一部に小豆くらいの大きさの赤黒い丸い塊が出来ていたら、自分で取ろうとせずに医療機関を受診してください。癪に障るので自分で一矢報いたいとの向きは、マダニの周辺に空気が残らないように完全に覆うようにメンタムを厚く塗り、小一時間放置。マダニが窒息したらメンタムごと剥がれ落ちますが、このとき残っていたら引き千切らずに受診すること。
昨年、豊岡病院でもマダニ咬症のために死亡した例が報告されています。マダニ咬症はとても怖い病気なので、たかがダニだ、などと侮ることなく、直ちに受診してください。マダニは耳たぶや陰部に好んでくっつきます。野山を歩くときには完全に体を衣服で覆って、マダニが入ってこないようにするなどの注意が必要です。ソケイ部に食いついたマダニを見つけたら、陰部を見せるのは恥ずかしいなどと躊躇わないで、直ちに受診する事。命に関ることだからです。
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