2015年8月13日木曜日

脊椎の構造と痛みの発生


 脊椎の形態、運動面で正確に機能している場合に痛みが起こることはありません。つまり、腰痛は脊椎の機能ユニットやその周辺のどこかで痛みに感受性のある組織が刺激を受けて興奮していることになります。それは脊椎の機能障害を示唆します。痛みを起こしている状態の大部分が腰椎と仙骨のなす角度が増大したことによります。これは脊椎前彎と言われる状態です。運動と無関係に起こる腰痛の75%が脊椎前腕を有していると言うことです。そのあたりのことを以下に詳しく述べます。

 脊柱は分節が連結したものです。各分節は、脊椎の中での位置によって形に違いがありますが、ごく一部を除いてとても類似しています。胸の部分は背骨から前のほうに肋骨が出ていて、大きな管のような構造になっており、比較的構造が保たれやすくなっています。問題は腰の部分です。加齢とともに筋力は低下してきます。そうすると、背骨の自然なカーブを保つために作用していた腹筋の筋力低下のために、腰の部分の背骨が前方に大きく湾曲するようになります。

 脊椎前腕の最大のポイントが仙骨と腰椎の間の角度が大きくなると言う形で現れます。この角度が大きくなると、腰椎が前方に辷る(すべる)と言うことが起こり易くなります(腰椎辷り症)。この辷り症を起こさない様にする自然の対策は椎間板を楔形にして、腰椎体が前方にすべる力に対してブレーキをかけることですが、そのために今度は椎体後面が直接接触する(kissing supine)と言うことが起こります。これまた痛みの原因になります。またもう一つ、痛みの原因となる事を考えなければなりません。

 背骨の後方を構成する骨の上下間の隙間(椎間孔)が狭くなり、神経が圧迫されると痛みや痺れが見られるようになりますし、運動神経が圧迫されると力が入りにくくなります。こうした事態を避けるには腹筋を鍛えておくことが重要です。何もへとへとになるまで筋トレをする必要はありません。起床時に足を20度ほど上げる(両足を同時に上げるほうが望ましい)、その際に上体も20度ほど起こして、お尻を真ん中にしてV字形に30秒保ってください。そうしたら30秒休んで、さらに30秒の腹筋、30秒休んでもう一度という具合に3回やってください。

 両足を挙上する時に上体も起こす理由は、足だけ挙上すると背骨がそっくり返って、その位置でロックされてしまい、ますます背骨のカーブがひどくなる可能性があるからです。この運動を2ヶ月も続けると、姿勢が良くなります。もしかすると身長も伸びるかもしれません。大きく前方にカーブしていた背骨が少しゆるいカーブになるからです。もしかすると、計測上ではわからない程度かもしれませんが、姿勢が良くなると、腰痛発生の原因のひとつを除去することが出来ます。

 骨盤牽引も良い対処法です。その際、骨盤下のストラップを牽引することで骨盤を挙上させ、前彎を減少させることが出来ます。骨盤牽引と言うリハビリテーションは、引っ張っているときは気持ちがいいけど、その時間が終わると元の木阿弥、そう感じている方が多いと思います。しかし、痛みと言うのはとてもデリケートな問題で、ちょっとした事で大きく変わってきます。私など、若い自分に何かに頭をぶつけてうずくまっていたときに、よちよち歩きの自分の子供がそばに寄ってきて、頭にもみじ葉のような小さな手を添えて『痛いの痛いの飛んで行け~』とやってくれたら痛みが退いて行ったと言う経験があります。かように痛みは微妙な気分に左右されるのです。

 ですから、リハビリの部署まで歩いていって、信頼できる理学療法士の指導を受けてリハビリに励むと、それだけで痛みがある程度和らぐ人が少なくないと思うのです。そして、毎日の積み重ねで気が付かないうちに仙骨の角度付けが小さくなり、腰痛を起こす原因の一つがある程度取り除かれていると言うことも考えられます。要は辛抱強い積み重ねなのです。そうした方法で痛みが取れない場合、薬物を局所に注入すると言う手段がとられることがあります。

 筋、靭帯、椎間関節から起こる痛みに神経脱落症状が同時に見られることはまれで、横突起間靭帯付近に局所麻酔薬を注射すれば痛みが消えることが多いと経験上わかっています。消えない場合、そのあたりを電気焼灼することで痛みが消退することもあるのですが、この電気焼灼はそれなりに複雑な手続きが必要ですので、当院では行っていません。

 腰痛の発生には、高血圧や糖尿病のように生活習慣に起因する面が多いので、どこそこに行けば治してくれる、などと考えないで、自分で出来るだけ腰痛発生の原因を減らして健康で快適な生活を送るようにする、これが一番大事です。常識的なことしか書けないでごめんなさいと言うところですが、自分の健康は自分で守る、それが一番快適だしお金もかかりません。

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