2015年2月13日金曜日

睡眠時無呼吸を調べる装置

 数日前にこの機械を借り出すことが出来ました。購入前に使い勝手などを調べておこうと言うものです。とても小さなもので、本体を腕にバンドでとめ、指先に血液中の酸素の分量を測る装置をつけ、鼻に細いチューブを装着してそこから呼気中の炭酸ガス濃度を測定、それを一晩中続けて、その結果を解析すると言うものです。とても小さなもので、これを装着したまま眠れたらそれでOKです。私自身が被験者になって試して見ました。

 私はどちらかと言うと神経質なほうで、どこででも眠れると言うわけではありません。最初病院当直のときに装着してみようと思ったのですが、ただでさえ枕が替わって安眠できないのに、こんな妙なものまでくっつけたらほとんど眠れないのではないか、そう案じて当直の翌日、下宿で就寝時に試してみたのです。装着した直後には確かに違和感を覚えましたが、いつの間にか寝入っていました。多分どなたでも大丈夫だと思います。そしてこの機械は基本的に通院していただき、使い方についての説明を受けた後にご自宅に持って帰っていただくことになります。

 その際何らかの書類をお渡しするので、それに記入していただく。そんな手順になります。そして2日間の間、連続して測定して、装置を返却しに来院していただく。二晩の検査結果を解析して、睡眠時無呼吸症候群と診断されるかどうかを見ます。もし、診断されたら、今度は睡眠時に気道に弱い陽圧をかける装置を手配しますので、ご自宅で睡眠中に装着していただくことになります。その装置を装着することがすなわち治療になるのです。費用は3割負担の方で月々1500円前後になると思います。

 この本体に機械的な打撃を加えたり、これを腕に巻きつけたまま入浴したり、豪雨の中で屋外作業したりすると壊れますので、機械を壊さないで用いる自信のない方、自信はあるけど周囲からやめたほうがいいと助言を受けそうな方には入院していただいて検査します。機械は1台しかありませんので、貸し出したらその翌々日には返却していただかなくてはなりません。

 ところで、睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気でしょうか。眠り込むと体中の筋肉が柔らかくなります。首の周りの組織も当然その筋肉部分が柔ら苦なります。思い出してください。赤ん坊のほっぺたを。すべすべ、つるつるで軟らかいのですが、我々高齢者のほっぺたと比べると、弾力があります。弾力があってやわらかいのと、弾力がなくて軟らかいのでは全く違います。赤ん坊は全身どこを見ても弾力があってやわらかい。丸々としていても、睡眠時無呼吸にはなりません。もっとも未熟児は呼吸中枢が未発達で、時々呼吸を忘れて無呼吸になることがありますけど。

 大人の場合、軟らかいけど弾力がないので、気道の周りの空間がその周辺の組織に押されて気道が狭くなりがちです。ましてや太り気味の人だと、気道を狭くする力が強く働くのです。鼾のきついひとなど、その気道狭窄の兆候と見ることができます。そして睡眠中に気道の狭窄や閉塞が起きると、当然苦しい。その苦しさのために眠りが中断されて突如大きな呼吸をします。しかしその場合も、半分眠った状態ですので、翌朝までそのことを記憶にとどめることがありません。

 そして夜間、呼吸苦のために中途覚醒してあえぎ呼吸をする際に血圧、血糖値などが上昇し、血液中のストレス・ホルモン濃度も当然上昇します。これが累積して、糖尿病、高血圧、そのほか様々な生活習慣病とリンクして、より悪化させるのです。ですから、肥満はそれ自体で健康に悪い、肥満でインスリンの効きが悪くなるので糖尿病に悪い、肥満で呼吸苦が出現してそのことで昼間時々爆睡するので、事故を誘発して危ない、睡眠時無呼吸が高血圧に悪い、糖尿病にも悪い、と言うことになり、様々に結びついて生活習慣病をよりいっそう悪化させるのです。

 食事の厳格なコントロールは難しいかもしれません。しかし、まず直せる所から治して行こうではありませんか。4月からは当院で睡眠時無呼吸の簡便な検査を始めます。大人の半分近くがその危険性を持っていると言われています。是非一度検査を受けてください。そして睡眠時無呼吸であることが判明したら、陽圧装置をつけて、睡眠を安寧なものにしてください。

 最初の写真は装置をつけてみたところです。装置そのものは左腕にバンドで固定していますが、装置が内側に来て、見えませんね。左人差し指の先につけているのが血液中の酸素を測定する装置、そして鼻にチューブが来ているのがお分かりと思いますが、このチューブから呼気中の炭酸ガスを測定し、呼吸が止まったら装置にその記録が残るようになります。



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